山の神と呼ばれ嫌われるハナオコゼ
どんな伝承か
畔田翠山の『水族志』に、ハナオコゼは紀州在田郡湯浅浦で一名ヤマノカミと呼ぶと記されている。同書は湯浅浦の漁人の言として、漁人はヤマノカミを取ると、これを憎んで切って海中に捨てると伝える。人を刺すのを恐れてのことだという。白井光太郎はこの記事を抄録して柳田国男へ書き送り、猟師がこの魚を珍重するのは、山の神という称呼と、鋭い刺でよく物を刺すこととに関わる信仰から出たものかと推している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。