厳島の山鬼の足跡
どんな伝承か
山鬼という語は安芸の厳島などでは、久しく天狗護法の別名のように考えられてきた。あるいは三鬼とも書いて、その数が三人だと解する者もあったらしい。御山の神聖を守護して不浄の凡俗が近づくのを戒め、しばしば奇異を示して不信者の所業をあらかじめ慎ませようとしていたという。最も普通の不思議は、回廊の板敷の上に偉大な足跡を印して衆人に見せることである。雪の朝には、思いがけず社の屋根の上などにこれを見ることもあった。次いで多いのは他の地方で天狗笑い・天狗倒しというもので、山中の茂った林の中で異常な物音がし、また意味不明の人声がすることもあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。