雄蛇が池に響く機の音
どんな伝承か
昔、山口のある家に嫁いびりで名高い姑がいた。嫁のすることは何もかも気に入らず、事あるごとに怒り散らした。心優しい嫁はひたすら機嫌を損ねまいと努めたが、姑の意地は変わらない。ある日、機の織り玉が気に入らないとひどく責められ、嫁は悲しみのあまり雄蛇が池に身を投げて死んだ。死んでもなお、どうすれば姑に気に入られる機が織れるかと稽古を続けているといい、霧の降る静かな夜には池の底から機を打つ音がきりきりはたりと聞こえてくるという。池は承応二年に築かれ周囲に八つの村があり、山口の千段穴という奇穴は、池の主が池にいないときの住処だとも伝える。
原典より
昔々、山口のある家に、いびりで名高い姑が居た。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。