妙蔵寺に立つ孝婦麻生利器の墓
どんな伝承か
千葉県夷隅郡大多喜町新町の妙蔵寺(日蓮宗)には、孝婦麻生氏の墓が伝えられている。婦は名を利器といい、貧しい家に嫁いで舅姑によく仕え、姑が酒と蕎麦を好めばこれを整えて共に楽しみ、家計に余裕があっても慎み深く暮らしたという。寛政十年に夫を、その年のうちに自らも病により三十九歳で亡くなったが、里人は生きた模範として彼女を称え、寛政十二年に墓表の銘が刻まれた。夷隅で孝婦の墓といえばこの麻生氏の墓を指したという。
原典より
夷隅で孝婦の墓と言へば、大多喜一の御城下であつた、大多喜町立光山妙蔵寺(日蓮宗)に建てられてゐる、孝婦麻生氏墓を指してゐた。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。