大和の桜を移した久留里の吉野
どんな伝承か
君津郡久留里町の吉野、もとの吉野村というところは、往昔、大和国吉野の桜を移し植えた所であると「廻国雑記」に見え、春は桜の名で知られている。同書には、花ざかり思ひやられてみよしのの桜のもみぢこれもなごりと、の歌も載る。近くの真里には桜井というところがあり、これは往昔の桜見から名を取ったともいうが、実はそこに古くからある桜井という井のあたりに起こった名だという。吉野という里の名は、吉野の桜が移されたという記念を物語る名であるとされる。
原典より
吉野(旧吉野村)といふところは、往昔、一の玉が、大和国吉野の桜を、移し植えたところだといふことで(「廻国雑記」)春は桜の名で知られてゐる。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。