上の歯が先に生えた子の身代わり人形
どんな伝承か
大口の平出水に、西ノ原スエゲサという人がいた。十歳ばかりのころ、上の歯から先に生えてきたので、これはカワドリ(河童)に取られると言われた。そこで姉たちが機を下ろして布を織り、着物を縫い上げると、麦わらで人形をこしらえてそれを着せ、胸にスエゲサと書いた。太鼓を打ち三味線を弾きながら大川まで運んでいき、川へ投げ込むと、スエゲサが川に入ってしまったと泣きまねをした。投げたあとは決して振り返ってはならないとされ、見ないようにして帰ってきたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。