一ツ葉の入江でボートを揺らした赤い顔
どんな伝承か
宮崎の話。今も存命の日高盛之という人が、友人二、三人と一ッ葉の入江にボートを浮かべていた。その日はよく晴れ、風もなく、波も穏やかだった。ところが突然、舟のまわりの水が激しく波立ちはじめ、しだいに転覆させられそうなほど揺さぶられた。一同は何事かと驚き、やっとのことで岸まで漕ぎ着けて陸へ上がった。上がってからふと水面を見ると、水面近くに顔の真っ赤なものがいた。これはてっきり河童につけられたのだと恐ろしくなり、みな逃げ帰ったという。
原典より
私が吉さんからこの話を聞いたのは吉さんが四十七、八歳になっていた昭和八、九年頃のことだ。—— 現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。