天狗の力を失った十二天山の惣平
どんな伝承か
明治の中ごろ、十二天山の麓に住む百姓の惣平は、毎月日を決めて山の祠へ夜参りを続けていた。ある夜の帰り道、参道で天狗が乗り移り、以来急な坂も飛ぶように登り、並外れた力で里人を驚かせたり助けたりした。ある昼、大勢の樵が材木を引き上げているのを見た惣平は、その人数でこれしきかとあざけり、材木を谷底へ落としてしまった。怒った樵たちに元へ戻せと迫られると、綱を投げて掛け声だけで引き上げたが、その両脇から異様な手が十二本ずつ出ているのを見て樵たちは逃げた。その夜、枕元に天狗が現れて惣平を叱り、二度と力を貸さなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。