小名木川の扇橋に浮いた河童の頭
どんな伝承か
昭和四十九年の春、昼を過ぎたころの話である。当時小学四年だった語り手は、従姉二人と連れ立って小名木川に架かる扇橋のたもとまで来た。そこには危険を知らせる青い立て札があり、河童の絵が添えられていた。何気なく水面を見ると、川底から何かがゆっくりと浮き上がってくる。三人で目を凝らしても、丸い皿のまわりに毛の生えた河童の頭にしか見えない。それは同じ場所で浮き沈みを繰り返し、やがて消えた。のちに年配者から、深川あたりは江戸のころからの河童の名所だと聞かされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。