冷水と刺身で職工を起こした怪力の工場主
どんな伝承か
深川で講習会を開いていたとき、講習員に松公と呼ばれる工場主がいた。小男に似合わず大力で、高下駄のまま四十貫ほどの石を担いで人を驚かせた男である。ある日、弟子の職工十一人が揃って感冒にかかり、枕を並べて寝込んだ。松公は湯から帰って熱を計ると自分も四十度あったが平気で、弟子の病は気の勢にすぎないと考えた。看護婦が反対するのを押し切り、その夜、弟子たちに冷水を多量に飲ませ刺身を食べさせ、翌朝は枕元で怒鳴って無理に起こした。弟子たちは殺されてはたまらぬとよろよろ持ち場に立ち、二日目からは平時どおり働いたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象治病法(心霊学研究会・近代(明治〜大正・霊術))
心霊学研究会編『心霊現象治病法』。精神と肉体の関係(一体一元論・心身相関)を理論的基礎とし、精神力によって病を癒す心霊療法を説く明治〜大正期の霊術書。観念・暗示・感應・睡眠と覚醒・潜在意識の働きを論じ、霊魂不滅と神人合一の思想を背景に、疾病の心霊療法、天地療法・轉地療法、加持祈祷、人が具える自然力としての法術を扱う。