観音堂の隣に降り続いた石とビール壜
どんな伝承か
昭和十年二月二十八日から三月にかけて、東京市城東区北砂町で投石怪談が起こった。石雨の中心は北砂町四丁目の仏心山観音堂で、堂守森田久蔵夫妻の隣に建つ三軒長屋にも連日石やセメント片、時にはビール壜までが降り注ぎ、ガラス戸を割りトタン屋根に穴を開けた。金子家では炊事中の女性の頭に石が当たり瘤ができるほどだった。砂町署が懸命に正体を探ったが掴めず、近所では二三年前に川で亡くなった見習いの小坊主の霊の仕業ではないかと噂した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。