堂守の連行で止んだ投石と小坊主の霊
どんな伝承か
北砂町の投石は観音堂裏の三軒長屋に集中し、ガラス戸が割られトタン屋根に穴が開いた。二三年前に川で溺死した見習いの小坊主の霊の仕業だと噂され、堂で遊んでいた子供が「背中に死んだ小僧さんが負ぶさって動けない」と訴えた話も伝わっている。野次馬が集まると石は降らず、明治大学と日本女子大を兼任する小熊教授は変態心理の現れだろうと分析した。三月十八日、警察が堂守の森田久蔵を連行すると投石はぴたりと止み、森田は納骨堂取締規則違反で留置されたのち赤痢と診断され隔離された。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。