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一-6 追ひすがる女の聲

所在地東京都江東区深川
登場池内、体験者
出典妖奇怪談集
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どんな伝承か

友人の池内君が経験した、いまだに謎だという実話。溝渠の多い深川に住んでいた彼は、夏の夜半十二時過ぎ、いつも通る寂しい河岸の道を急いでいた。片側には材木が高く積まれ、一方はどんよりと黒い水面である。下駄に何かが触れたので拾い上げると紫の袱紗包みで、指先には通帳と印章と札束らしい感触があった。喜んで数十間歩くと、か細い若い女の声が「もし、もし」と呼び止める。振り返っても誰もいない。声に追いすがられ、電柱の陰で包みを開けると、中身は一握りの髪の毛と血のついた黄楊の櫛だった。捨てると声はやんだという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

妖奇怪談集(山門王吉・昭和初期(昭和11年前後))

山門王吉による『妖奇怪談集』は、明治初年から昭和初期にかけて日本各地で報告された超自然現象と心霊現象を記録した怪談集である。本書は単なる創作ではなく、実話や伝聞に基づいた報告として編纂されている。便所の霊、消えた女、生霊の憑依、棺桶の浮遊、死者との遭遇など、多様な現象が描かれる。特に強調されるのは、女性の死(身投げ・轢死・虐待死)に伴う怨念と執念である。

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