西方寺に残る幽霊の髪の毛
どんな伝承か
播州網干の西北、浜田という漁村にある浄土宗西方寺は、朝鮮の役で捕らえられて帰化した少年僧のために豊臣秀吉が建てた寺と伝わる。寺宝の中に、桐箱に納めた長さ三尺ほどの赤みを帯びた黒髪がある。三代前の住職のころ、冬の百日修行で夜更けに七墓巡りをしていた弟子僧の前に、九州の浪人だったという痩せこけた武士の霊が現れ、成仏させてほしいと頼んだ。僧が狐狸でない証を求めると、霊は自分の遺骸の頭髪を差し出して消えた。僧は寺へ帰り着くなり気を失ったが、話を聞いた和尚が檀家と七日の法会を営むと、結願の朝に武士の霊が現れて礼を述べたという。そのとき受け取った髪が、今も幽霊の髪の毛として寺に残る。
原典より
その時弟子僧が受けた毛髪こそ今も宝物の幽霊の髪の毛である。—— お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化と幽霊 怪談揃ひ(大文館編輯部(編纂))
『お化と幽霊 怪談揃ひ』は、播州を中心に摂津・淡路・大阪・神戸の怪異を集めた怪談集である。神戸のチャブ屋に残された下女の片足の靴、明石の坊主橋に出る按摩の怨霊、西瓜に浮かぶ女の顔、淡路洲本の白壁物語、西宮のねてこが池の怪などを、地名と人名を挙げて講談調で語る。三十余りの話を並べ、天保や明治九年の出来事とする話のほか、寄せられた原稿によるとことわる話も含む。