城主の夢に遷座を告げた長壁明神
どんな伝承か
前橋城三ノ丸の長壁明神は、もとは播磨の姫路城内に古くから祀られていた神である。何を祀るのか、いつからあるのかも分からないが、たびたび霊威を示し、祈れば験があるので歴代の城主に崇められ、なかでも霊鷲院と呼ばれた城主は深く信仰していた。その霊鷲院が前橋への国替えを命じられて移ろうとしたとき、長壁明神が夢に現れ、前橋へ行ったらすぐ城内に宮を作って祀れと告げた。移った後の忙しさで宮を建てられずにいると、また同じ夢告があったので、驚いた城主は三ノ丸に宮を建て、神主を置いて日ごとに祀ったという。御霊を分けて移したので、姫路の社も城内に残ったとされる。
原典より
御霊を別にうつし奉りたるにて、姫路にて今に其儘城内にありて御稜威恐しとぞ。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。