簪をくわえて飛来した鳩の使い
どんな伝承か
二十八日の夕方、鳩が簪をくわえて空から飛んで来て春に渡し、飛び去った。八幡大神が出雲に着くとすぐ、その許から鳩を使いに立てたのだという。同じとき長壁大神からも烏が使いに来て、花簪を二本くれた。翌二十九日には出雲の八幡大神から再び鳩の使いが来て、神々が出雲で春のことを議して定めたと告げ、身の丈六尺ほどで黒く長い衣に高下駄の天狗も訪れた。夕方、春が台所で味噌をすりながら赤城山を眺めると、尾根を天狗が五、六人歩いていた。神々が出雲へ出て留守なので天狗が遊び歩いているのだという。閏十月一日には天狗が使いとして半襟や三朱札を届けた。
原典より
さて七つ時比、鳩かんざしをくはえて空を飛来て、其かんざしを春女にあたへて飛び去れり。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。