敷島公園の池で潜水を強いられた兵士たち
どんな伝承か
昭和二十年、空襲が激しくなると、本土決戦に備える兵士たちが前橋の町にもやって来た。報告者の勤める幼稚園の隣の小学校では、兵士が重い銃を持って地面を這わされ、遅れると上官に竹の棒で尻を叩かれていた。利根川のほとりの敷島公園近くにある報告者の家のそばにも、高射砲陣地を造るらしい十五人ほどの小隊が住み着いた。隊長は軍人訓を暗記できない者を木に登らせて蝉のまねをさせ、小便までさせた。夏には公園の池で潜水の競争をさせ、泳げない兵が溺れかけて仲間の人工呼吸で助かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。