ハエ取りの果てに豚舎で殴られた予科練
どんな伝承か
昭和二十年二月、十六歳で飛行予科練習生として三重海軍航空隊奈良分遣隊に入った少年は、四月に岡崎海軍航空隊へ、さらに一か月余りで横須賀海軍航空隊へ移った。今度こそ飛行機に乗れると期待したが、仕事は飛行場の地ならしやトロッコ押しばかりだった。七月末、隊長から一人百匹以上のハエを捕れと命じられ、友人の木下と飛行場の隅のアヒルや豚のいる場所でハエを叩いた。数をそろえて引き揚げようとすると、兵隊に豚も天皇陛下のものだと咎められて拳骨を浴び、二人は豚の糞の中に転がった。その半月後に日本は降伏したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。