襖も障子も立てられない若夫婦の家
どんな伝承か
横須賀の稲荷谷戸に、外との境になる戸や玄関、勝手口、窓はあるのに、内側には襖も障子も一枚として入れていない家があった。押入れまで丸見えのその中に所帯道具を並べて、若い夫婦と赤ん坊が暮らしていた。夫は許嫁を捨ててこの妻と一緒になり、捨てられた娘は恨んで自ら命を絶ったのだという。それからは、襖でも障子でも立てて寝ると必ず倒され、その上から恐ろしい形相の女がのしかかってくる。どこへ移っても同じで、真冬でも戸を立てられなかった。六十年ほど前の話として語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。