終戦を知らず山砲を引いた陸戦隊
どんな伝承か
語り手は昭和二十年二月、大竹海兵団に予科練習生として入ったが、ある日突然軍用列車で横須賀へ運ばれた。乗る飛行機がもう無く、海軍陸戦隊の山砲中隊に回されたのである。八月十五日、午前の訓練で海岸の洞窟まで山砲を引いて戻ると、全員が練兵場に並ばされ天皇の放送を聞いたが、ほとんど聞き取れなかった。そのまま午後の訓練に出ると、道行く人に兵隊さん戦争はもう終わったんだよと声をかけられたが、意味が分からず顔を見合わせるばかりだった。夕方兵舎に戻ると上官が涙ながらに降伏を説明した。その夜、開け放った窓の向こうに町の灯がともり、平和のありがたさが身にしみたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。