遊女の香水を持ち帰った罰のバッター
どんな伝承か
昭和二十年四月頃、徳山港に入港して上陸を許された報告者ら三、四人は、集会所で竹のコップの酒を二、三杯あおってから慰安所へ寄った。帰りがけ、鏡の前に置いた帽子と一緒に香水までつかんで持ち帰り、今日の戦果だと皆で喜んでいた。班長も一緒に笑っていたが、その夜、総員が叩き起こされて甲板に並ばされ、遊女の香水を持ち帰って帝国軍人の名を汚したとして、上陸者は前へ支えの罰を三十分受けたうえ、足を開いた姿勢でバッターを十三発打たれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸)
『現代民話考 ― 軍隊』は、松谷みよ子が編んだ、軍隊と戦争をめぐる現代の民話の集成である。日本民話の会の雑誌『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きによって寄せられた話をもとに、十五年戦争を中心に徴兵検査から新兵のしごき、戦地、虐殺や飢え、敗戦、収容所、戦犯、軍隊生活の怪談までを収める。巻頭に序文「明日の民話のために」と論考「軍隊考」を置き、十三の部に分けた各話の末に話者と回答者の名と在住地を記す。