味泥の大賊長次郎の失踪
どんな伝承か
味泥付近はもとの天領で幕府直轄の地であった。長次郎の被害が多くなると、代官所からか飾磨県からか、二十人ばかりの捕手が長次郎捕縛のため味泥へ向かった。暖かな朝日が松原に射す道で、前方から一人の僧侶が来た。捕手の頭領が長次郎の動静を尋ねると、僧は「今も来る道で悪いことでもして帰るらしいところを見かけた、恐ろしい奴だからよほど用心しないと捕り逃がす」と告げ、静かに歩き去った。捕手が村役人の案内で長次郎の家を囲むと、家には誰もいなかった。長次郎はその日限り村から姿を消し、二度と味泥へ帰らなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。