法衣
どんな伝承か
千住か熊谷かの話だという。ある尼寺に、住職の尼と親しくしていた若い男がいつも遊びに来ていたが、姿を見せなくなった。案じていた尼のもとへある日その男がひょっこり現れ、法衣を貸してほしいと頼んだ。尼は快く一枚の法衣を渡し、男は嬉しそうに持ち帰った。ところがしばらくして、確かに持って出たはずの法衣が寺の玄関に置かれているのを見つけ、尼は不審に思った。そこへ男の家から使いが来て、男が長患いの末にその日亡くなったと知らされ、先に会った男が霊であったことを悟った。見舞いに訪れて男の母に尋ねると、男の寝間着が汚れ続けるので浴衣、次いで女の寝間着を着せたところ、男がそれを嫌がっていたと涙ながらに語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。