蛇の皮が火となった篠原家
どんな伝承か
高岡郡の奥、越知という山村の南に当る山腹に、樽の滝という数十丈の大瀑がある。その滝のある山を南に越えた所に篠原という農家があった。鉄砲の上手な篠原の主人は、ある日この滝の瀑壺へ下り、巌穴から半身を現した松の幹のような大蛇を撃ち落とした。皮を剝いで庭の竹に掛け、村人に見せて得意になり、その夜は隣家の者と酒を飲んで「彼処には雄と雌と二つおる」と語った。と、主人は突然「あれ、あれ」と叫んでのたうち回った。帰る人々の見ている前で蛇の皮は炎となって空に浮かび、篠原家の屋根へ飛んで家を焼き、一家は一人残らず焼死した。火の玉は樽の滝の方へ飛び去り、篠原一門の者は滝の傍へ行くと霧に巻かれて死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。