合鍵で土蔵を破った少年と鍵田
どんな伝承か
名張の蔵持村原出に生まれた太郎は、手先の器用な子であった。両親を早くに亡くして引き取られた親類の家で、土蔵の鍵を持ち出し、田の土に型を取って鉄を流し込み、合鍵をこしらえてしまう。以来その鍵で蔵に忍び込み、金目の物ばかりを盗み出していたが、待ち伏せた家人に捕えられ、詫びもきかれず追い出された。太郎は美濃へ移って盗賊となり、長範と名乗って暴れた。もっとも盗むのは富める者からで、得た物は貧しい人に分けたという。のちに美濃の赤坂の宿で牛若丸の荷を狙って忍び込み、かえって斬られた。生地は鍵の型を取ったことから鍵田と呼ばれ、春日神社には長範の名を記した棟札が残るという。
原典より
<柳田——「長範屋敷」「熊阪清水」>もう遠い昔のこと、蔵持村原出で熊坂長範が生まれた。—— 日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第9巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第9巻』は、日本伝説大系編集委員会が編んだ伝説資料集の一巻である。三重・奈良・和歌山・大阪の各地に伝わる伝説を、三輪山・安珍清姫・弘法清水・油掛け地蔵など百余りの話型ごとに集める。各話型は例話を冒頭に据えて『日本伝説名彙』などとの対応を示し、〔類話〕に伝承地と出典つきの梗概を並べ、〔文献〕に近世以前の史料の原文を添えて補う構成をとる。