大正の初め頃のこと
どんな伝承か
大正の初め頃、埼玉県飯能市でのことという。芳延から子ノ山へ登る参道の途中にある滝ノ茶屋という茶店の主人、酒井三郎という老人が見たという天狗の提灯の話である。それはたった一つ、木の枝に青白く光っていたそうだ。酒井は若い頃、子ノ山権現の御用使いをしており、ある日同僚と二人で中沢へ出かけ、帰りは夜になってしまった。龍谷橋を過ぎて杉木立の中に入ると、前方の木の枝にぼんやりとした青白い光の玉が吊るされているのが見えた。それは二人ともはっきりと見えたので、錯覚ではなかったと酒井は語っていたという。酒井三郎は終戦後に亡くなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考・1970年代)
松谷みよ子『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』を小話単位で全532話収録。河童・天狗・神かくしにまつわる現代の民話・怪異譚を全国から採集し、地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明530話・市区町村判明477話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。