神迎えの夜に分かれて動いた天狗の火
どんな伝承か
明治四十年ごろの夏の夕暮れどき、南設楽郡作手村上小林の峯田源造氏が関西地方の神社めぐりから帰り、村人を招いて神迎えのお日待ちをすることになった。少し蒸し暑く小雨のばらつく天候で、儀式や酒もりの前に縁側へ出て雁峯山の方を眺めていると、千本立あたりの山に大きな提灯ほどの火が見えた。火はするすると雁峯山の頂上まで上り、二つに分かれて東西へ進み、しばらくして元に戻って一つになった。「神迎えだから天狗様が出た」と大騒ぎになり、一同は念仏を唱え、ふんどしや草履を頭に載せた。汚い物を頭に載せると天狗が寄りつかないという言い伝えによる。やがて怪しい火も消えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第7巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第7巻』は、愛知・静岡・岐阜・長野の四県の伝説を集めた伝説資料集の一巻である。笠寺観音や日本武尊から天狗・山姥・八百比丘尼・夜叉ヶ池、石や池や塚の由来、白米城・一夜山まで九十七の項目を立て、口承を中心とする伝承を収める。各項目は伝承地を明記した例話を冒頭に置き、『日本伝説名彙』などの対応する題名を添えたうえで、〔類話〕〔参考〕〔文献〕を続けて近世以前の記録の原文まで示す。