山を登って増えていく灯
どんな伝承か
早川孝太郎の『三州横山話』に、明治三十年ごろの出来事として伝えられる話がある。南設楽郡長篠村大字横川字横山の早川徳平の家へ奉公していた留吉という男が、朝早く草刈りに出ようとしたときのことである。晴れ渡った空の下、向かいの出沢村にあるフジウという山を、灯がひとつぐんぐん登ってゆくのが見えた。ふっと二つに分かれたかと思うと次々に数を増し、ついには山一面が火となり、やがてまた一つにまとまって燃え上がったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。