修験者による山中での異音透視
どんな伝承か
昭和二十二年の早春、武州飯能町の山中にこもって荒行を続けていた、ある不動堂の修験者の話だという。歳はおよそ七十に近く、東京の池袋駅から電車に乗り、秩父山脈の麓にある飯能駅で下車して山に登り、ひとり山小屋にこもって毎朝水垢離をとり神霊に祈願していた。ある日の早朝、薬草を探して山中を歩いていると、ふと妙な音色が聞こえてきた。それは死に瀕した人がうめくような響きにも思われ、谷底で誰かが遭難しているのではないかと気にかかった。心霊家であるこの修験者は、その音の正体を透視して確かめてみようとしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が昭和二十四年に著した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせ、精神感応などの実例を、戦時中の出来事や知人の話、外国の研究記事から集めて語り、精神感応や霊波の考えで説明を加える。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、巻末に「まぼろしの靴音」「死と心霊の神秘」を置く。奥付には千部限定版とあり、善隣出版社から出た。