銀座で老人を誘った謎の婦人
どんな伝承か
芝の烏森に住む勘兵衛は、十七、八のころから身持ちの悪い道楽者で、七十近い今も遊びの虫が抜けない。パナマ帽に薄茶の洋服、めっきの柄のステッキという姿で新橋から銀座へ舗道を歩いていくと、銀座七丁目の資生堂のあたりで三十前後の背の高い美しい女とすれ違った。女は数歩行って振り返り、老人に笑いかけると、耳もとでどこかで遊ばないかとささやく。金がないと断っても散財はさせないと引かない。熱海も湯河原も顔見知りが多いからと嫌がられ、逗子か田浦へと決まって、二人は新橋駅から汽車に乗った。切符を買ったのは女で、鰐皮の袋には万札の束が幾つも入っていた。
原典より
* ■ 亡霊への科学:感覚の神秘、私の波論、精神電流反応、美女の嬌態、九種霊説* **第二篇 心霊現象*** 障子に触った話* インチキ幽霊* 妖精と火の玉* 第六感と判断法* シェイランの話…—— 心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊の神秘(武久勇三・1949年(昭和24年))
『心霊の神秘』は、武久勇三が昭和二十四年に著した心霊現象の解説書である。近親の死に際して現れた幽霊や夢知らせ、精神感応などの実例を、戦時中の出来事や知人の話、外国の研究記事から集めて語り、精神感応や霊波の考えで説明を加える。後半の「第三篇 超心理学」では透視術・夢の原理・催眠術・読心術を説き、巻末に「まぼろしの靴音」「死と心霊の神秘」を置く。奥付には千部限定版とあり、善隣出版社から出た。