切り裂かれた銀座のタクシー看板
どんな伝承か
一九八四年三月一日の午後一時ごろ、中央区銀座四丁目のタクシー乗り場の歩道で、看板がずたずたに切り裂かれているのを通行人が見つけ、警視庁へ届け出た。看板はタクシー料金の値上げを説明したもので、五か所を切られてほとんど読み取れない状態になっていた。最も深い傷は左上から入り、文字をいくつも断ち割って走っている。所轄は、傷口が異様なほど鋭く執拗であることから、看板に恨みを持つ者の仕業と見て調べた。人が人を斬るとき傷口に思いが表れるというが、まさに通り悪魔が形を変えて現れたようだと評されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・1985年(昭和60年))
『妖怪の民俗学――日本の見えない空間』は、宮田登が一九八五年(昭和六十年)に著した、妖怪の現れる場所を論じた民俗学の書である。柳田国男と井上円了の妖怪論、幽霊と妖怪の違い、口裂け女と産女、皿屋敷、化物屋敷と下女、辻・橋・境の怪異、怪光と怪音、七不思議、通り悪魔と髪切りを、古文献や新聞記事、各地の伝承から読み解く。四章から成り、都市の空間に妖怪が現れる仕組みを軸に据える。