銀座を歩く「生命無代進呈」の求職者
どんな伝承か
ネオンの輝く銀座の街を、背中に大きな紙をぶら下げて歩く男がいた。紙には生命無代進呈と大書され、意気に感じてくれる人が仕事をくれるなら命を賭けて働く、精神病者ではなく真剣な求職者だ、身体強健、身元確実と書き添えてあった。声をかけると男は、好きや冗談でやっているのではないと答えた。京都の立命館を中途で退き、大阪で巡査や店員を務めたが頑固がたたって職を失い、東海道を歩いて二週間前に上京し、いまは月島の救世軍に世話になっているという。不況下の求職合戦を映す街頭の姿だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪奇集成-明治大正昭和篇(富岡直方編著・日本怪奇集成・昭和初期(推定昭和2-3年))
明治・大正・昭和の怪奇譚(日本怪奇集成)/生首と幽霊の怪/狐狸のいたずら/怪盗と世相の怪異/各時代の不思議な事件