夜這いの舟を川下へ流された岩吉
どんな伝承か
北川村小島の渡し場にも狸がいた。そのころ折野岩吉という男が、日浦へ夜這いに行こうと渡し場から舟を出した。冬の寒い晩で、着物をたっぷり着込んでいた。舟が川の中ほどに来ると、上へ上へとなべらの瀬までさかのぼったと思ったが大間違いで、狸に化かされて舟はまっすぐ下り、巻の瀬で気づいたときには転覆していた。泳ごうにも着物が重く水は多く、水中ではうまく脱げない。ようやく泳げたときはすけぶちまで流され、泉の下手で岸にはい上がった。夜這いどころか褌一つで帰り、風邪で十日も寝込んだという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。