高入道に口三味線で応じた善八
どんな伝承か
徳島県那賀郡坂野村の常盤新田に善八という男がいて、善通と呼ばれていた。漁が好きで附近の川尻へよく網を打ちに行ったが、いたずら狸がいて、網を投げるたびに水へ飛び込んで掻き回し、魚を追い散らしてしまう。それでも善八は根気よく一〇日ばかり打ち続け、獲物が一匹もなくても頓着しなかった。狸が根負けした一一日目の晩、川尻へ来た善八の前に雲を突くばかりの高入道が現れ「コリャ善八」と義太夫がかりで呼びかけた。善八がすかさず「チャン」と口三味線で調子を合わせると、狸はぱっと姿を消し、以後は網の邪魔もせず毎晩大漁だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。