恩を返した法蔵寺の老猫
どんな伝承か
江戸初め、正保年間の話という。猫寺とも呼ばれる北畑の法蔵寺に、三代の住職に飼われた老猫がいた。猫は夜ごと法師に化け、住職の衣をまとって鎮守堂へ行き、近所の猫を集めて説法をしていた。衣のすそが朝ごとに濡れているのをいぶかった住職が後をつけて正体を知り、翌朝それとなく声をかけると、猫は寺を去った。後に猫は武士の姿で訪れて非礼をわび、恩返しを約束した。やがて美麻村千見の下條七兵衛信春の葬儀が嵐で何日も進まず、通りがかった旅の僧の勧めで正保四年(一六四七)初秋に十一代格州良逸和尚を招くと、空はたちまち晴れた。これを機に千見の人々が檀家となり、旅僧は猫の化身と考えられて猫檀家と呼ばれたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第4巻 3 (北信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第4巻(三)北信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち北信地方の伝説の章を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・沢と道・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌の順に、条ごとに採集地を添えて短い伝えを並べる。戸隠の鬼女紅葉、黒姫と大沼池の大蛇、久米路橋の人柱、秋山郷の平家伝説など、善光寺平から奥信濃にかけての土地に結びついた話が多い。