丁半を教える虎猫の恩返し
どんな伝承か
或所に貞吉という男があった。放蕩の末に家を飛び出して仙台の方へ流浪し、農家に奉公して主人の信を得、二番目の娘を妻に貰った。永年ののち身代金を受けて妻とともに故郷へ帰ると、家は荒れ果てていた。やがて昔の博奕仲間に誘われ、旅で貯めた金をみな失う。ある夜五両勝って帰る途中、打ち殺されかけていた虎猫を五両で買い取り、可愛がった。また負け続けて家財を失い、夜逃げを図った夜は大嵐で出られなかった。その夜、猫が夢枕に立ち、懐に入れて連れて行けば丁半の出目を教えると告げる。言うとおりにすると、猫は丁のとき丁、半のとき半と鳴き、貞吉だけに聞き分けられた。貞吉は勝ち続けて富み栄えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。