和彦の霊が説いた思想善導
どんな伝承か
霊媒小林寿子の夫は東京獣医学校を出てその方面の仕事をする人で、寿子自身は読書も好まぬ内気な主婦だった。霊媒の現象が初めて現れたのは、三人姉弟のただ一人の男の子だった十歳の和彦を昭和五年の一月に亡くし、仏前に端座して親としての不注意を詫び冥福を祈っていたときからだという。『主婦の友』の記者は、齋藤惣一から仙台の土井晩翠宅での降霊の話を聞いて関心を持ち、上京中の土井と小林夫人に会って実験に立ち会った。乗り移った和彦の霊は、自分の仕事は思想の善導と衆生の済度であり、霊界に起こったことが一々現界に写るのだと語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・矢原秀人・2006年(平成18年))
『あの世はあった――文豪たちは見た!ふるえた!』は、三浦正雄と矢原秀人が二〇〇六年に著した、近代日本の作家や知識人の霊体験を紹介する読み物である。熱海の旅館で遠藤周作と三浦朱門が同時に遭った幽霊、佐藤愛子の心霊現象、菊池寛・宮沢賢治・小泉八雲・土井晩翠・新渡戸稲造・南方熊楠らの体験、夏目漱石の臨死体験を、本人や周囲の文章を引いて語る。一人一章の全十二章にまえがき・あとがきを添え、巻末に霊媒クランドン夫人の実験記録を付録として収める。