棺を下ろした眠かけ和尚と虎猫
どんな伝承か
或る山寺に九十にもなる老いた和尚がいて、世間からも忘れられ、痩せた老いた虎猫だけを相手に炉端でうとうとしていた。或る日、虎猫が口を利いて恩返しをしたいと言い、近く長者の一人娘が死ぬから、葬式の折に自分が棺を宙に吊り上げる、その時に南無トラヤヤと唱えよと教えた。果たして娘が死に、大勢の僧が集まった葬列で棺が空高く上がって下りない。誰も下ろせず、招かれていなかった山寺の眠かけ和尚が呼ばれ、経の中でその文句を唱えると棺は静かに下りた。寺は建て直され、和尚は生仏と敬われて門前は町となった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。