恩返しの猫と今戸焼の招き猫
どんな伝承か
嘉永のはじめ、浅草あたりの裏長屋で野菜の行商をしていた男が、老父の看病と貧しさに追われ、長年飼った猫に向かって、養いきれないから恩を返す道を考えろと戯れに言った。まもなく猫は姿を消したが、寝たきりの父だけは、毎晩猫が来て痛む所に乗ってくれると言い、しだいに回復していった。やがて夢のお告げだと言って土や木の猫を求める客が次々に訪れ、今戸焼の猫を仕入れて売ると暮らしが立った。翌年には浅草寺の随身門の内に店を構え、お猫さんと呼ばれて嘉永五年の春には大いに繁盛したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物界霊異誌(岡田建文・岡田建文・心霊研究・1927年(昭和2年))
『動物界霊異誌』は、岡田建文(蒼溟)が昭和二年に著し、郷土研究社から出した動物怪異の記録集である。二十余年にわたって集めた体験や同志の報告から、動物にまつわる怪異の事例を選び、山陰地方を中心とする明治・大正の見聞と、近世の随筆に見える記事を収める。蝦蟇・猫・河童・狐・狸と貉・外道(人狐)・蛇などの動物ごとに、解説・事例・古人の記述の順に並べ、心霊の立場からの考察を加える。