炭焼き小屋に現れた白髪の老婆
どんな伝承か
大正年間のこと、奥内の山子たちが横浜の川代山という所で仕事をしていた。同じころ、奥内の西村のおやじが山一つ越えたノシホ場沢で炭を焼いていて、よく山子小屋へ遊びに来た。ある日やって来て、ゆうべは恐ろしい目にあったと話した。粗末な炭焼き小屋で炉の火を絶やさぬようにして寝ていると、何かの気配で目が覚め、見ると真っ白な髪を振り乱した八十過ぎの老婆が、炉の火に立ちはだかり、真っ赤な口を開けてにらみつけていた。飛び起きて怒鳴り、そばの道具を投げつけると姿はかき消えた。翌朝、小屋の周りはムジナの足跡だらけだった。何日か後、おやじは隣の炭焼きと足跡を追ってそのムジナを捕らえたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。