子鯨を助けてと夢で乞うた母鯨
どんな伝承か
玄海沿岸に伝わる話。小川島を中心とする玄海地方はかつて捕鯨の基地で、なかでも呼子に住む五郎はモリ打ちの名人だった。ある二月の夜、五郎は一頭の鯨が二頭の子鯨を連れ、自分は殺されてもよいから子だけは助けてくれと涙を流して哀願する夢を見た。翌日出漁すると、夢と同じ子連れの鯨が現れる。仲間にせき立てられ、五郎はついに子鯨の心臓にモリを突き立てた。家へ急ぐと我が子が首筋にモリ先を刺されて死んでおり、発狂した五郎はやがて水死体となって浜に打ち上げられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。