征西将軍宮ゆかりの隈府の松囃子
どんな伝承か
肥後の菊池郡隈府にも松囃子が残っている。その起こりは征西将軍宮が在府の頃からで、もとは正月の神事であったが、ある年、正月に出征の事があってから延期して凱旋後に行ったのが例となり、毎年七月十五日に行われてきた。しかしそれも後に故あって変更され、十月の菊池神社秋祭の節に行うことになった。脇能は老松で、囃子の詞は天下泰平・国家安穏・武運長久・息災延命を唱え、千年丹頂の鶴、万歳岩上の亀を寿ぐ。仕手一人が小松に鶴の素袍大紋に引立烏帽子で立ち、笹に垂手をつけたものを執って舞い、囃子は大小の鼓と笛による。
原典より
その起りは征西將軍宮在府の頃からで正月の神事であつたが或年正月出征の事あつてから延期して凱旋後に行つたのが例こなり毎年七月十五日に行ひ來つた。—— 炉辺叢書 筑紫野民譚集(及川儀右衛門・1923年(大正12年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
炉辺叢書 筑紫野民譚集(及川儀右衛門・1923年(大正12年))
『炉辺叢書 筑紫野民譚集』は、及川儀右衛門が筑紫野で暮らした二年ほどの間に、土地の故老や下宿の老婆から聞いた話、教え子が書き送ってきた物語を文献とも照らしてまとめた民譚集である。筑後を中心に筑前・肥前・肥後・豊前・豊後の河童、怪火、長者の話、神事と歌舞、山と水の伝奇、狐狸や幽霊の怪異を六篇に分けて収め、多くの話に古記録を引いた〔註〕を添える。序の日付は大正十二年六月である。