六 トンネルの狂女
どんな伝承か
西鹿児島駅発の列車乗務員筒井は、饅頭石トンネル付近で轢死した女の脚を目撃して以来、青い鬼火や女の狂った笑い声、車窓に迫る黒髪の女の凄惨な顔に繰り返し悩まされ、ついに神経衰弱となって退職を願い出た。饅頭石の死霊は鹿児島市ネオン街の女給石上民子で、その母親も娘の自殺を苦に発狂し同じトンネルで亡くなっていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖奇怪談集(山門王吉・1936年(昭和11年))
『妖奇怪談集』は、山門王吉が著し、東亞書房が昭和十一年七月七日に発行した怪談集である。序に言うとおり、白昼の銀座で死んだはずの友人にマッチを借りる話や円タクに乗る亡霊、トンネルの狂女など、当時の実話に取材した新感覚の話を主とし、旧来の型の話を二篇添える。巻頭の「怪談コント一束」は闇の声や消えた女など七つの小話から成り、続いて「銀座の悪夢」から「生首を盗む女」まで七篇を収め、巻末に奥付と同書房の満洲案内書などの広告を載せる。