公益農道の闇に立つ母子の幽霊
どんな伝承か
天草の本渡市(現・天草市)で左官を営む男の話。仕事で島内を回り、帰りが夜九時十時になることも珍しくない。西海岸へ行くとき公益農道を通れば旧道より三十分早いが、初めてこの道でカーブでもない所で荷台の荷が落ちた。二度目は相棒と車二台で並走中、自分の車だけライトが消えエンジンが止まり、引き返してきた相棒に引っ張ってもらった。高浜からの帰り、思い切って公益農道を走ると、三つのトンネルを越えた先に、ネグリジェ姿の女が浴衣の子供二人を連れて立っていた。そのまま走り抜けたが、帰宅すると飼犬が父にまで吠え続け、父は塩を撒いて「もどってくんなはい」と唱えて歩いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。