唐木崎部落のやこ持ち
どんな伝承か
九州の肥前佐賀を中心に、鹿児島・壱岐・天草・五島などには「やこ(野狐)持ち」の俗信が分布している。民間伝承の報告によれば、天草の御所浦島にある唐木崎という部落では、六十戸のうち、やこが憑いていない家はたった二戸しかないという。やこは姿こそ見えないが、小さな猫に似たものとされる。取り憑かれた者はおかしなふるまいを見せ、漢語を口にしたりする一方で、よそから金をくわえて戻ったり、綿作りの家なら綿を集めて帰ったりするという。娘が嫁ぐときには、このやこも一緒についていくと言われている。
原典より
やこは目に見えないが、小さな猫のようなものであるという。—— 憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版)
『憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、昭和三十一年に書き加えて新版とした研究書である。出雲・隠岐を中心とする山陰の狐持ちなど、家筋に結びつけられた憑きもの迷信を、法務局が扱った人権事件、藩の触書や村の古文書、加茂町の世帯調査から集めている。狐持ちの家に生まれた著者の体験から説き起こし、江戸中期以降の新興地主への反感に起こりを求める。柳田国男が序を寄せている。