加茂町の狐持ち世帯の分布と来歴
どんな伝承か
出雲地方における狐持ちの分布を全市町村にわたって調べるのは容易でない。誰も自分の家が狐持ち家筋だと喜んで語ってはくれず、むしろひた隠しにするのが普通だから、調査は非常に困難であった。そこで著者は自分の故郷の町に限って実態調査の一歩を踏み出した。島根県大原郡加茂町は、赤川流域に点在する農地を中心に周囲を山に囲まれた盆地で、東西六・四粁、南北六・八粁、総人口八千百三十六人の小さな町である。世帯数千三百六十五のうち農家が千六十五軒を占める。この千三百六十五世帯のうち狐持ち世帯は百十一で、百世帯あたり約八・二世帯という比率であった。
原典より
ところでここでは総世帯数、一、三六五世帯のうち、狐持ち世帯が一一一世帯で、その比率は、一〇〇世帯中約八・二世帯が狐持ち家筋だというわけになります。—— 憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)(速水保孝・1953年(昭和28年)初版・1956年(昭和31年)新版)
『憑きもの持ち迷信――その歴史的考察(改訂版)』は、速水保孝が昭和二十八年に著し、昭和三十一年に書き加えて新版とした研究書である。出雲・隠岐を中心とする山陰の狐持ちなど、家筋に結びつけられた憑きもの迷信を、法務局が扱った人権事件、藩の触書や村の古文書、加茂町の世帯調査から集めている。狐持ちの家に生まれた著者の体験から説き起こし、江戸中期以降の新興地主への反感に起こりを求める。柳田国男が序を寄せている。