大納言魚名の朝座に居すわった野狐
どんな伝承か
『続日本紀』によると、宝亀六年五月、一匹の野狐が大納言藤原魚名の朝堂の座に上がり込んで居すわっていたという。同じ年の八月には閤門にも野狐がうずくまっていたと続けて記される。著者は、狐が鳴いたり人前に現れたりすることは当時は不吉の兆しとされていたらしいとして、日本書紀・続日本紀・日本紀略・三代実録などから狐の出現を記した記事を年の順に並べており、これはその一つである。
原典より
龜六年五月乙 、有野狐居干大納言藤原朝臣魚名朝座。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。