乙訓社に群がる野狐百匹
どんな伝承か
『続日本紀』によると、宝亀五年正月、山背国から次のような報告が朝廷に届いた。前の年の十二月、国内の乙訓郡にある乙訓社のあたりに狼や鹿が多く現れ、さらに野狐が百匹ほども毎夜鳴き続け、七日たってようやく止んだという。狐が鳴いたり姿を見せたりすることが凶兆として朝廷に報告された例として、著者は日本紀略や三代実録の記事とともにこれを挙げている。
原典より
寶龜五年正月乙丑、山背國言、去年十二月、於管内乙訓郡乙訓社狼及鹿多。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。