夫婦川で絡み合う心中夫婦の玉火
どんな伝承か
雨の降る闇夜などには、奈良市白毫寺町の大安寺の墓地と白毫寺の墓地から、それぞれ尾を引いた玉火がジャンジャンと恐ろしい音を立てて出てくるという。二つの火は奈良の南の夫婦川のあたりで絡み合ったのち、元の墓地へ戻っていく。人に見つかると火はいつまでもさまよい、見つめ続けるとその人の頭上へ流れてきて苦しめる。十数年前、旧奈良連隊兵営の南の池のあたりでこれに遭った人は、逃げても追われ、池に飛び込んでも頭上を離れず、朝まで苦しんだ。昔心中した夫婦を別々の寺の墓に葬ったための火だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。