神隠しで異国を巡った池之端の少年
どんな伝承か
徳川の末、下谷池ノ端の正慶寺で雑用に使われていた十四の少年は、それまでにも二、三度神隠しに遭って諸国を連れ回されていた。文化十一年十二月二十七日、糊を買いに出たところを見知った異形の男に手を取られ、そのまま空へ上がる。筥崎八幡宮の豆まきに居合わせ、万里の長城の上を飛び、日は照るのに凍えるほど寒い土地の一郭へ下ろされた。住人はみな日本人で、貨幣も見慣れたものだったという。公卿装束の貴人に江戸へ帰りたいと答え、正月二日に六人の異人に送られて戻った。寒いと訴えると、じきに深川の寺が焼けるからその火で温まれと言われ、火事の上空で暖を取った。
原典より
徳川末期に、江戸の下谷の池ノ端の正慶寺に、雑用に使はれて居る十四歳の少年があつて、二三度神隠くしに逢ひ、各国を連れ歩るかれたことがあつたが、文化十一年十二月二十七日に、その少年が又神隠しに逢って翌正月の二日に帰へされたこ…—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))